配偶者特別控除は、生計を一にする配偶者で合計所得金額が133万円以下であり、控除対象配偶者に当たらない者がいる場合に、本人の総所得金額などから一定額を引く制度である(所得税法第83条の2第1項)。本人の合計所得金額が1,000万円以下であることも要件である(同項)。
条文は表ではなく算式で書かれている
所得税法第83条の2第1項は表を持っていない。第1号イ・ロ・ハの3つの場合分けと、そこからの計算方法が書かれているだけである。
| 配偶者の合計所得金額 | 条文の定め | 条番号 |
|---|---|---|
| 95万円以下 | 38万円 | 所得税法第83条の2第1項第1号イ |
| 95万円超 130万円以下 | 38万円から、93万1円を超える部分の金額を引く | 同号ロ |
| 130万円超 | 3万円 | 同号ハ |
第1号ロの「93万1円を超える部分の金額」には、さらに条件が付いている。その金額が5万円の整数倍から3万円を引いた金額でないときは、5万円の整数倍から3万円を引いた金額のうち、その金額に満たない最も大きいものを使う(所得税法第83条の2第1項第1号ロ)。
「5万円の整数倍から3万円を引いた金額」は、2万円・7万円・12万円と5万円ずつ増える(所得税法第83条の2第1項第1号ロ)。この階段が、公表されている表の5万円きざみの正体である。
本人の所得が900万円を超えたとき
本人の合計所得金額が900万円を超え950万円以下の場合は、第1号イからハまでの金額の3分の2に相当する金額とし、1万円未満の端数は切り上げる(所得税法第83条の2第1項第2号)。950万円を超え1,000万円以下の場合は3分の1で、同じく1万円未満を切り上げる(同項第3号)。
たとえば38万円の3分の2は253,333円だが、1万円未満を切り上げて26万円になる(所得税法第83条の2第1項第2号)。公表されている表の26万円はこうして出る。
表と算式が一致することを確かめた
このページは表を写さず、上の算式そのままで計算している。国税庁が公表している表(タックスアンサー No.1195 配偶者特別控除)と突き合わせた。配偶者の合計所得金額58万1円から133万円まで千円きざみ、本人の所得3区分すべてで、2,250点すべてが一致した(検算の方法)。
配偶者控除との境目
配偶者の合計所得金額が58万円以下のときは、配偶者特別控除ではなく配偶者控除の対象である(所得税法第2条第1項第33号・第83条第1項)。133万円を超えるとどちらの対象にもならない(所得税法第83条の2第1項)。
適用の条件は4つある
所得税法第83条の2第1項の柱書は、括弧の中で条件を重ねている。4つとも満たさないと使えない。
| 条件 | 条番号 |
|---|---|
| 生計を一にする配偶者であること | 所得税法第83条の2第1項 |
| 配偶者が青色事業専従者等でないこと | 同項かっこ書き(所得税法第2条第1項第33号) |
| 配偶者の合計所得金額が133万円以下であること | 同項かっこ書き |
| 配偶者が控除対象配偶者に該当しないこと(=合計所得金額が58万円を超える) | 同項 |
| 本人の合計所得金額が1,000万円以下であること | 同項かっこ書き |
「控除対象配偶者に該当しないもの」と書かれているので、配偶者控除と同時には使えない(所得税法第83条の2第1項)。配偶者の合計所得金額が58万円以下なら配偶者控除(所得税法第2条第1項第33号)、超えて133万円以下ならこちらである(所得税法第83条の2第1項)。
逓減の算式を、表に書き写していない
第1号ロが、38万円から減っていく額を1つの式で書いている(所得税法第83条の2第1項第1号ロ)。
三十八万円からその配偶者の合計所得金額のうち九十三万一円を超える部分の金額(当該超える部分の金額が五万円の整数倍の金額から三万円を控除した金額でないときは、五万円の整数倍の金額から三万円を控除した金額で当該超える部分の金額に満たないもののうち最も多い金額とする。)を控除した金額
この道具は、この算式をそのまま計算している。 表を書き写していないので、写し間違いが起きない。
かっこ書きが言っているのは、引く額を「5万円の倍数 − 3万円」の刻みに丸めるということである(所得税法第83条の2第1項第1号ロかっこ書き)。2万円・7万円・12万円…という並びになる。93万1円という半端な起点は、この刻みと組み合わせて段を作るためにある(同号ロ)。
本人の所得で3分の2、3分の1になる
| 本人の合計所得金額 | 額 | 条番号 |
|---|---|---|
| 900万円以下 | 第1号イ〜ハの額 | 所得税法第83条の2第1項第1号 |
| 900万円超 950万円以下 | 第1号の額の3分の2(1万円未満切上げ) | 同項第2号 |
| 950万円超 1,000万円以下 | 第1号の額の3分の1(1万円未満切上げ) | 同項第3号 |
端数は切り上げである。 第2号・第3号が「当該金額に一万円未満の端数がある場合には、これを切り上げた金額」と書いている。切り捨てではない。
配偶者の所得が130万円を超えると3万円で止まる
第1号ハは「合計所得金額が百三十万円を超える配偶者 三万円」と書いている(所得税法第83条の2第1項第1号ハ)。
130万円超133万円以下は一律3万円である(所得税法第83条の2第1項第1号ハ)。逓減はそこで終わる。133万円を超えると柱書のかっこ書きから外れて、控除そのものが無くなる(同項柱書)。
使えなくなる場合が3つある
第2項が3つの号で定めている(所得税法第83条の2第2項)。
| 号 | どんな場合 |
|---|---|
| 第1号 | 配偶者の側が、本人を配偶者特別控除の対象にしている場合 |
| 第2号 | 配偶者が、扶養控除等申告書に源泉控除対象配偶者を記載した居住者として源泉徴収を受けている場合 |
| 第3号 | 配偶者が、公的年金等の扶養親族等申告書で同じ扱いを受けている場合 |
第1号は「夫婦がお互いを対象にすること」を防いでいる。 第2号・第3号は、月々の源泉徴収の側で既に反映されている場合を除いている。この道具は第2項の判定をしていない。
住民税の配偶者特別控除は額が違う
住民税の側は地方税法第314条の2第1項第10号の2にある。 配偶者の合計所得金額の上限133万円は同じだが、額の並びは所得税と違う。市町村民税は同号、道府県民税は同法第34条第1項第10号の2である。
よくある取り違え
1. 「配偶者控除と両方使える」
使えない。 第1項が「控除対象配偶者に該当しないもの」を対象にしている(所得税法第83条の2第1項)。
2. 「配偶者の所得が150万円までは38万円」
38万円が満額なのは合計所得金額95万円以下である(所得税法第83条の2第1項第1号イ)。150万円という数字は給与収入の話で、条文には出てこない。
3. 「端数は切り捨て」
切り上げである(所得税法第83条の2第1項第2号・第3号)。
4. 「逓減は1円刻み」
5万円の倍数から3万円を引いた刻みで丸める(所得税法第83条の2第1項第1号ロかっこ書き)。1円ごとには動かない。
5. 「夫婦の両方が使える」
一方が使っていれば他方は使えない(所得税法第83条の2第2項第1号)。
よくある質問
133万円を1円超えたらどうなりますか
控除は無くなる。 第1項の柱書が「合計所得金額が百三十三万円以下であるものに限る」と書いている(所得税法第83条の2第1項)。
93万1円という数字は何ですか
逓減の起点である(所得税法第83条の2第1項第1号ロ)。この額を超える部分を38万円から引く。半端な数字なのは、刻みの丸めと組み合わせて段を作るためである。
本人の所得が1,000万円を超えたら
使えない。 第1項のかっこ書きが「合計所得金額が千万円以下である当該居住者の配偶者に限る」と書いている(所得税法第83条の2第1項)。
配偶者が青色事業専従者の場合は
除かれる(所得税法第83条の2第1項かっこ書き・同法第2条第1項第33号)。
扶養控除と重ねられますか
配偶者は扶養親族から除かれている(所得税法第2条第1項第34号)。同じ人について両方を引くことはない。扶養控除を参照。
年末調整で処理されますか
第2項第2号・第3号が源泉徴収との関係を書いている(所得税法第83条の2第2項)。手続そのものは同法第190条にある。
所得税の計算のどこに入るか
配偶者特別控除は所得控除である。所得税法第21条第1項第3号の段で、税率を当てる前の所得から引く。
所得控除どうしの順序は、雑損控除だけが先と決まっている(所得税法第87条第1項)。同項は配偶者特別控除を名指しで挙げている。
判定の時期
配偶者特別控除の適用の判定は、その年12月31日の現況による(所得税法第85条第3項)。
年の途中で死亡した場合は、その時の現況による(同項かっこ書き)。
この計算が扱っていないこと
- 第2項の3つの適用除外(所得税法第83条の2第2項)
- 住民税の配偶者特別控除(地方税法第314条の2第1項第10号の2)
- 配偶者の合計所得金額の計算そのもの