60歳以上65歳未満の被保険者の賃金が下がったとき、高年齢雇用継続基本給付金が支給される(雇用保険法第61条第1項)。
支給の線は75%
みなし賃金日額に30を乗じて得た額の75%を下るに至った場合に、当該支給対象月について支給する(雇用保険法第61条第1項)。
「下るに至つた場合」である。 75%ちょうどでは支給されない(雇用保険法第61条第1項)。賃金が下がったことが要件である。
30を乗じるのは、日額を月額に直すためである(雇用保険法第61条第1項)。みなし賃金日額に30を掛けた額が、賃金と比べる基準になる(同項)。
支給対象月は60歳から65歳まで
支給対象月は、被保険者が60歳に達した日の属する月から65歳に達する日の属する月までの期間内にある月である(雇用保険法第61条第2項)。
65歳に達した月で終わる。
みなし賃金日額
みなし賃金日額は、60歳に達した日を離職の日とみなして計算した賃金日額である(雇用保険法第61条第1項)。
条文は「受給資格に係る離職の日とみなして第十七条(第三項を除く。)の規定を適用した場合に算定されることとなる賃金日額に相当する額」と定義している(雇用保険法第61条第1項)。
賃金日額の計算は同法第17条による。 被保険者期間として計算された最後の6か月に支払われた賃金の総額を180で除して得た額である。
率は条文に1つしか無い
第5項が2つの号に分かれている(雇用保険法第61条第5項)。
| 号 | どんな場合 | 率 | 条番号 |
|---|---|---|---|
| 第1号 | 賃金が64%未満のとき | 100分の10 | 雇用保険法第61条第5項第1号 |
| 第2号 | 賃金が64%以上75%未満のとき | 10%から一定の割合で逓減するように厚生労働省令で定める率 | 同項第2号 |
第1号の10%だけが条文にある(雇用保険法第61条第5項第1号)。第2号の率は厚生労働省令にある(同項第2号)。「64%以上75%未満なら逓減する」ということまでは同号が書いているが、具体的な率は書いていない。
この道具は、条文にある10%の側だけを出す(雇用保険法第61条第5項第1号)。同項第2号に当たる場合は率を出さない。書けない数値を出さないためである。
支給限度額は2か所に出てくる
| どこ | 何を定めているか | 条番号 |
|---|---|---|
| 第1項第2号 | 賃金が支給限度額以上であるときは支給しない | 雇用保険法第61条第1項第2号 |
| 第5項ただし書 | 給付金に賃金を加えた額が支給限度額を超えるときは、支給限度額から賃金を減じた額とする | 雇用保険法第61条第5項ただし書 |
支給限度額そのものは第1項第2号に金額で書かれている。 ただし厚生労働大臣が毎年度変更する(雇用保険法第61条第7項)。
第6項は別の不支給の定めである。 賃金として算定された額が第17条第4項第1号に掲げる額の100分の80に相当する額を超えないときは支給しない(雇用保険法第61条第6項)。限度額の調整とは別の条項である。
この道具は限度額を計算していない。
在職老齢年金との調整
高年齢雇用継続給付を受けると、老齢厚生年金の側で支給停止がある(厚生年金保険法附則第11条の6)。
この道具は年金側の調整を扱っていない。在職老齢年金の支給停止額を参照。
失業等給付の1つなので、課税されない
雇用保険法第12条は「租税その他の公課は、失業等給付として支給を受けた金銭を標準として、課することができない」と書いている。
高年齢雇用継続給付は失業等給付の1つである(雇用保険法第10条第1項)。したがって非課税である。
雇用継続給付の種類
雇用保険法第10条第6項が、雇用継続給付として2つを挙げている。
| 給付 | 条番号 |
|---|---|
| 高年齢雇用継続給付 | 雇用保険法第61条・第61条の2 |
| 介護休業給付 | 雇用保険法第61条の4 |
育児休業給付は雇用継続給付ではなく、独立した給付である(雇用保険法第10条第5項)。
高年齢再就職給付金との違い
雇用保険法第61条の見出しは「高年齢雇用継続基本給付金」である。 再就職した場合の高年齢再就職給付金(同法第61条の2)と区別するための名前である。
高年齢再就職給付金は、基本手当を受給した後に再就職した場合の給付である。 基本給付金(同法第61条)とは別の条である。失業給付の所定給付日数を参照。
よくある取り違え
1. 「賃金が下がれば必ず支給される」
75%を下るに至った場合である(雇用保険法第61条第1項)。
2. 「率は15%」
条文にあるのは100分の10である(雇用保険法第61条第5項第1号)。改正で変わっている数なので、条文を確かめること。
3. 「64%以上75%未満の率も条文にある」
無い。厚生労働省令で定める率である(雇用保険法第61条第5項第2号)。
4. 「みなし賃金日額に月数を掛ける」
30を乗じる(雇用保険法第61条第1項)。
5. 「年金には影響しない」
厚生年金保険法附則第11条の6に支給停止の定めがある。
よくある質問
みなし賃金日額とは何ですか
雇用保険法第61条第1項に定めがある。 60歳到達時の賃金をもとに算定する。
支給の期間はいつまでですか
65歳に達する月までである(雇用保険法第61条第2項)。
賃金が上がったらどうなりますか
75%以上になれば支給されない(雇用保険法第61条第1項)。
高年齢再就職給付金とは違いますか
別である。 高年齢再就職給付金は雇用保険法第61条の2にある。この道具は基本給付金(第61条)を扱っている。
申請はどうしますか
雇用保険法第61条には申請の手続が書かれていない。
給付金に所得税はかかりますか
かからない(雇用保険法第12条)。
この計算が扱っていないこと
- 64%以上75%未満の率(雇用保険法第61条第5項第2号の厚生労働省令)。条文に無いので出さない
- 支給限度額(雇用保険法第61条第1項第2号・第5項ただし書)。毎年度変更される(同条第7項)
- 賃金が著しく低い場合の不支給(雇用保険法第61条第6項)
- みなし賃金日額そのもの(雇用保険法第61条第1項)
- 受給の要件の判定。60歳以上65歳未満であること、被保険者であった期間が5年以上あることなど(雇用保険法第61条第1項)
- 在職老齢年金との調整(厚生年金保険法附則第11条の6)
- 高年齢再就職給付金(雇用保険法第61条の2)
離職したときの失業給付の所定給付日数と、育児休業給付金は別のページにある。数字をどう確かめたかは検算の方法に書いてある。