判定は2段ある
| 段 | 見るもの | 線 | 条番号 |
|---|---|---|---|
| 1段目 | 基準期間における課税売上高 | 1,000万円以下なら免除 | 消費税法第9条第1項 |
| 2段目 | 特定期間における課税売上高 | 1,000万円を超えると免除されない | 消費税法第9条の2第1項 |
1段目を通っても、2段目で外れることがある。 同じ1,000万円という数字だが、条は2つあり、「以下」と「超える」で向きも違う(消費税法第9条第1項・第9条の2第1項)。
ちょうど1,000万円のとき、1段目は通り、2段目でも外れない(消費税法第9条第1項・第9条の2第1項)。「以下」と「超える」で境目の扱いが揃っている。
基準期間と特定期間はいつか
| 語 | いつ | 条番号 |
|---|---|---|
| 基準期間 | 個人事業者はその年の前々年、法人はその事業年度の前々事業年度 | 消費税法第2条第1項第14号 |
| 特定期間 | 個人事業者はその年の前年1月1日から6月30日まで、法人は前事業年度開始の日以後6か月 | 消費税法第9条の2第4項 |
2年前を見るのが基準期間(消費税法第2条第1項第14号)、前年の上半期を見るのが特定期間である(消費税法第9条の2第4項)。
基準期間における課税売上高の計算
第9条第2項が号で場合分けしている(消費税法第9条第2項)。
| 号 | 誰 | 中身 | 条番号 |
|---|---|---|---|
| 第1号 | 個人事業者および基準期間が1年である法人 | 課税資産の譲渡等の対価の額の合計額から、売上げに係る税抜対価の返還等の金額の合計額を控除した残額 | 消費税法第9条第2項第1号 |
| 第2号 | 基準期間が1年でない法人 | 第1号の額を年換算した額 | 消費税法第9条第2項第2号 |
返品や値引きの分を引く。 総売上ではない。
課税資産の譲渡等の対価の額は、消費税法第28条第1項に規定する対価の額をいう(消費税法第9条第2項第1号)。消費税と地方消費税を含まない、税抜きの額である。
特定期間は給与でも判定できる
特定期間における課税売上高に代えて、給与等の支払額の合計額とすることができる(消費税法第9条の2第3項)。
どちらで見るかを事業者が選べる。 売上が1,000万円を超えていても、給与が1,000万円以下なら免除される(同条第1項・第3項)。
逆に、給与が1,000万円を超えていても売上が1,000万円以下なら免除される(消費税法第9条の2第1項・第3項)。同条第3項は「することができる」と書いており、事業者が選べる形になっている。
適格請求書発行事業者は最初から対象外
第9条第1項のかっこ書きが「適格請求書発行事業者を除く」と書いている(消費税法第9条第1項)。
登録していれば、課税売上高がいくらでも納税義務がある。 基準期間や特定期間の判定に入る前に外れる。
課税事業者を自分から選ぶこともできる
課税事業者選択届出書を提出した場合、第9条第1項は適用されない(消費税法第9条第4項)。
仕入れの消費税が多い事業者は、還付を受けるためにこれを選ぶことがある。 ただし2年間は変更できない(消費税法第9条第6項)。
この道具は選択届出を扱っていない。
基準期間が無い場合と、新設法人の特例
設立1期目・2期目の法人には基準期間が無い(消費税法第2条第1項第14号)。
基準期間が無ければ、第9条第1項の「1,000万円以下」の判定ができない。 そのため原則として納税義務が免除される。
| 特例 | 中身 | 条番号 |
|---|---|---|
| 新設法人 | 基準期間が無い法人で、資本金1,000万円以上のものは免除しない | 消費税法第12条の2第1項 |
| 特定新規設立法人 | 一定の要件に当たる新規設立法人は免除しない | 消費税法第12条の3第1項 |
基準期間が無くても課税事業者になる場合がある。 この道具は第9条・第9条の2の判定だけを扱っている。
よくある取り違え
1. 「前年の売上で判定する」
基準期間は前々年である(消費税法第2条第1項第14号)。前年の上半期は特定期間として別に見る(同法第9条の2第4項)。
2. 「特定期間は必ず売上で見る」
給与等の支払額でもよい(消費税法第9条の2第3項)。
3. 「インボイス登録しても売上が少なければ免除」
適格請求書発行事業者は除かれる(消費税法第9条第1項かっこ書き)。
4. 「新設法人は必ず2年間免税」
資本金1,000万円以上なら免除しない(消費税法第12条の2第1項)。
5. 「ちょうど1,000万円なら課税事業者」
免除される(消費税法第9条第1項)。「以下」である。
よくある質問
課税売上高に消費税は含みますか
第9条第2項第1号が「対価の額」と書いており、第28条第1項の対価の額をいう。 税抜きである。
免税事業者は消費税を請求できますか
消費税法第9条第1項は納税義務の免除を定めているだけである。 請求の可否は書かれていない。
免税事業者から課税事業者になったら
消費税法第36条に棚卸資産に係る調整の定めがある。
相続で事業を引き継いだ場合は
消費税法第10条に相続があった場合の特例がある。
簡易課税と併用できますか
簡易課税は課税事業者の計算方法である(消費税法第37条)。免税事業者には関係しない。消費税の簡易課税を参照。
2割特例とは何ですか
租税特別措置法にある経過措置である。 消費税法第9条には無い。
この計算が扱っていないこと
- 課税事業者の選択(消費税法第9条第4項・第6項)
- 新設法人・特定新規設立法人の特例(消費税法第12条の2・第12条の3)
- 相続・合併・分割があった場合の特例(消費税法第10条〜第12条)
- 基準期間における課税売上高の計算(消費税法第9条第2項)