贈与税は、その年中に贈与により取得した財産の合計額から基礎控除を引き、残った金額に税率の表を当てて計算する(相続税法第21条の7)。ここで扱うのは暦年課税である。
基礎控除110万円は、相続税法には書かれていない
相続税法第21条の5は「課税価格から六十万円を控除する」と書いている(相続税法第21条の5)。110万円ではない。
110万円は租税特別措置法にある。租税特別措置法第70条の2の4第1項が「相続税法第二十一条の五の規定にかかわらず、課税価格から百十万円を控除する」と書いている(租税特別措置法第70条の2の4第1項)。
本則を読んでも110万円は出てこない(相続税法第21条の5)。措置法が読み替えている。同じ形は公的年金等控除にもある。
税率の表が2つある
特例贈与財産と一般贈与財産で、表が違う。
特例贈与財産は、その年1月1日に18歳以上の人が直系尊属(父母・祖父母など)から贈与により取得した財産である(租税特別措置法第70条の2の5第1項)。それ以外は一般贈与財産になる。
| 控除後の課税価格 | 一般の税率(相続税法第21条の7) | 特例の税率(租税特別措置法第70条の2の5第1項) |
|---|---|---|
| 200万円以下 | 10% | 10% |
| 200万円超 300万円以下 | 15% | 15% |
| 300万円超 400万円以下 | 20% | 15% |
| 400万円超 600万円以下 | 30% | 20% |
| 600万円超 1,000万円以下 | 40% | 30% |
| 1,000万円超 1,500万円以下 | 45% | 40% |
| 1,500万円超 3,000万円以下 | 50% | 45% |
| 3,000万円超 4,500万円以下 | 55% | 50% |
| 4,500万円超 | 55% | 55% |
段の数はどちらも8段で、率の並びも同じである。違うのは区分の金額だけである(相続税法第21条の7・租税特別措置法第70条の2の5第1項)。
同じ年に両方あるときは按分する
特例贈与財産と一般贈与財産の両方をその年に受けた場合、租税特別措置法第70条の2の5第3項が計算の仕方を定めている。
- 控除後の課税価格の全額を特例の表で計算し、特例贈与財産の割合を掛ける(租税特別措置法第70条の2の5第3項第1号)
- 控除後の課税価格の全額を一般の表で計算し、一般贈与財産の割合を掛ける(同項第2号)
- その2つを合計する(同項)
割合の分母は、基礎控除を引く前の合計額である。 第3項第1号のかっこ書きが「合計贈与価額」を「その年中に贈与により取得した財産の価額の合計額」と定めており、そこから引くのは相続税法第21条の6の控除だけである(租税特別措置法第70条の2の5第3項第1号)。
たとえば特例400万円・一般100万円なら、控除後の課税価格は390万円になる。全額を特例で計算すると485,000円、全額を一般で計算すると530,000円である。これに400万円/500万円と100万円/500万円を掛けて足すと494,000円になる(租税特別措置法第70条の2の5第3項)。
按分の端数
第3項は割合を掛けるとしか書いておらず、円未満の端数をどうするかを書いていない(租税特別措置法第70条の2の5第3項)。この道具は切り捨てている。
暦年で区切る
贈与税は、その年中に贈与により取得した財産の価額の合計額について課する(相続税法第21条の2第1項)。
1月1日から12月31日までである(相続税法第21条の2第1項)。贈与のたびに課税するのではなく、年で合計する(同項)。
基礎控除も年に1回である(租税特別措置法第70条の2の4第1項)。
申告と納付
贈与税の申告書は、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに提出する(相続税法第28条第1項)。
所得税の確定申告(所得税法第120条第1項)とは期間が違う。 所得税は2月16日からである。
相続時精算課税は別の制度
相続時精算課税は相続税法第21条の9以下にある。
暦年課税(相続税法第21条の2)とは別の計算である。 選択すると、その後の贈与はすべて相続時精算課税による(相続税法第21条の9第3項)。
この道具は暦年課税を扱っている。
納税義務者
贈与により財産を取得した個人が納める(相続税法第1条の4第1項)。
贈った側ではない。 受け取った側が納める。
申告書の提出先
贈与税の申告書は、納税地の所轄税務署長に提出する(相続税法第28条第1項)。
納税地は相続税法第62条による。
税率表は2つある
相続税法第21条の7の一般税率と、租税特別措置法第70条の2の5の特例税率である。
特例税率は、直系尊属から18歳以上の者への贈与に適用される(租税特別措置法第70条の2の5第1項)。
どちらも8段で、段の切れ目は同じである。 率だけが一部違う。
基礎控除は措置法にある
相続税法第21条の5は60万円だが、租税特別措置法第70条の2の4第1項が110万円に読み替える。
「贈与税の基礎控除110万円」は、相続税法だけを読んでも出てこない(租税特別措置法第70条の2の4第1項)。
贈与税は相続税法にある
贈与税という名前の法律は無い。 相続税法の第2章に贈与税が置かれている(相続税法第21条以下)。
相続税を補完する税として、同じ法律にまとめられている。
この計算が扱っていないこと
相続時精算課税を扱っていない(相続税法第21条の9)。これを選んでいる場合、その贈与者からの贈与は暦年課税の計算に入らない。
次の非課税・控除も扱っていない。
- 贈与税の配偶者控除2,000万円(相続税法第21条の6)
- 住宅取得等資金の贈与の非課税(租税特別措置法第70条の2)
- 教育資金の一括贈与の非課税(租税特別措置法第70条の2の2)
- 結婚・子育て資金の一括贈与の非課税(租税特別措置法第70条の2の3)
贈与税がかからない財産の判定もしていない(相続税法第21条の3)。扶養義務者からの生活費や教育費などである。
特例税率を使える人かどうかを判定していない。 その年1月1日に18歳以上であること、直系尊属からの贈与であることが要件である(租税特別措置法第70条の2の5第1項)。この道具は、入れた区分をそのまま使う。
贈与した人が亡くなったときの相続税の基礎控除と総額は別のページにある。数字をどう確かめたかは検算の方法に、いつの条文で計算しているかはいつの条文で計算するかに書いてある。