業務上の負傷または疾病による療養のため労働できず、賃金を受けない日には、休業補償給付が支給される(労働者災害補償保険法第14条第1項)。
「休業した日の8割が出る」と言われるが、8割という数字はどこにも書かれていない。 2つの別の根拠を足した数である。
60%は法律、20%は省令にある
| 給付 | 率 | 根拠 |
|---|---|---|
| 休業補償給付 | 給付基礎日額の100分の60 | 労働者災害補償保険法第14条第1項 |
| 休業特別支給金 | 給付基礎日額の100分の20 | 労働者災害補償保険特別支給金支給規則第3条第1項 |
合わせて80%になるが、根拠が法律と省令に分かれている(労働者災害補償保険法第14条第1項・労働者災害補償保険特別支給金支給規則第3条第1項)。「休業補償は8割」と1つの数字で言うと、どちらの根拠を指しているのか分からなくなる。この道具は、2つを分けて出す。
給付基礎日額は労働基準法の平均賃金
労働者災害補償保険法第8条第1項は「給付基礎日額は、労働基準法第十二条の平均賃金に相当する額とする」と書いている(労働者災害補償保険法第8条第1項)。
平均賃金そのものの計算は平均賃金・休業手当・解雇予告手当にある。
第4日目から支給する
労働することができないために賃金を受けない日の第4日目から支給する(労働者災害補償保険法第14条第1項)。休業特別支給金も同じである(労働者災害補償保険特別支給金支給規則第3条第1項)。
待期は3日である。 ただし条文は「3日」と書いていない。「第四日目から」と書いている。待期の3日はそこから導かれる数である。
最初の3日は支給されない。 業務上の災害であれば、その3日分は事業主が労働基準法第76条の休業補償をする。
一部だけ働いた日は、差額の60%
所定労働時間のうち一部分についてのみ労働する日(部分算定日)は、給付基礎日額から支払われる賃金の額を控除した額の100分の60である(労働者災害補償保険法第14条第1項ただし書)。
給付基礎日額そのものの60%ではない(労働者災害補償保険法第14条第1項ただし書)。差額に対して60%を掛ける。
給付基礎日額10,000円でその日の賃金が4,000円なら、6,000円の60%で3,600円になる(労働者災害補償保険法第14条第1項ただし書)。休業特別支給金も同じ形である(労働者災害補償保険特別支給金支給規則第3条第1項ただし書)。
障害年金を受けられるときは減る
同一の事由について障害厚生年金または障害基礎年金を受けることができるときは、額に政令で定める率を乗じる(労働者災害補償保険法第14条第2項)。
率は別表第一第1号から第3号までの政令で定める率のうち、傷病補償年金について定める率である(同項)。その額が政令で定める額を下回る場合には、政令で定める額になる(同項かっこ書き)。
この道具は併給の調整を計算していない。
業務災害の保険給付の1つ
労働者災害補償保険法第12条の8第1項第2号である。 7つの給付のうちの1つで、療養補償給付(第1号)や障害補償給付(第3号)とは別である。労災の障害補償給付を参照。
業務災害と通勤災害で名前が変わる
| 災害 | 給付の名前 | 条番号 |
|---|---|---|
| 業務災害 | 休業補償給付 | 労働者災害補償保険法第14条 |
| 通勤災害 | 休業給付 | 労働者災害補償保険法第22条の2 |
通勤災害には「補償」が付かない。 使用者の災害補償責任(労働基準法第75条以下)に対応するのが業務災害だからである。
額は同じである。 労働者災害補償保険法第22条の2第3項が第14条を準用している。
労働基準法の休業補償とは別
使用者の災害補償は労働基準法第76条にある。 労災保険から給付が行われる場合、使用者は補償の責を免れる(労働基準法第84条第1項)。
平均賃金の60%という数字は労働基準法第76条第1項にもある。 根拠が2つあることになるが、この道具は労働者災害補償保険法第14条の側を扱っている。平均賃金・休業手当・解雇予告手当を参照。
課税されない
租税その他の公課は、保険給付として支給を受けた金品を標準として、課することができない(労働者災害補償保険法第12条の6)。
よくある取り違え
1. 「休業補償は8割と労災保険法に書いてある」
60%が労働者災害補償保険法第14条第1項、20%が労働者災害補償保険特別支給金支給規則第3条第1項である。 1つの条には書かれていない。
2. 「待期の3日は条文に書いてある」
「第四日目から支給する」と書いてある(労働者災害補償保険法第14条第1項)。3日という数は導かれるものである。
3. 「一部働いた日は給付基礎日額の60%」
差額の60%である(労働者災害補償保険法第14条第1項ただし書)。
4. 「障害年金と全額を両方受けられる」
調整がある(労働者災害補償保険法第14条第2項)。
5. 「休業補償給付に所得税がかかる」
かからない(労働者災害補償保険法第12条の6)。
よくある質問
給付基礎日額とは何ですか
労働者災害補償保険法第8条にある。 労働基準法第12条の平均賃金に相当する額である。
待期の3日間はどうなりますか
業務災害の場合、使用者が労働基準法第76条第1項の休業補償を行う。 労災保険からは出ない。
通勤災害でも同じですか
通勤災害の休業給付は労働者災害補償保険法第22条の2にある。 待期の扱いが違う。
いつまで支給されますか
療養開始後1年6か月を経過して傷病等級に該当すると、傷病補償年金に切り替わる(労働者災害補償保険法第12条の8第3項)。
有給休暇を使った日は
第14条第1項は「賃金を受けない日」と書いている(労働者災害補償保険法第14条第1項)。
最高限度額とは何ですか
労働者災害補償保険法第8条の2第2項第2号にある。 給付基礎日額に上限を設ける定めである。
この計算が扱っていないこと
- 給付基礎日額そのもの(労働者災害補償保険法第8条)。入れた額を使う
- スライド制と年齢階層別の最低限度額・最高限度額(労働者災害補償保険法第8条の2第1項・第2項)。休業が長引くと給付基礎日額が改定されることがある
- 障害厚生年金・障害基礎年金との併給の調整(労働者災害補償保険法第14条第2項の政令)
- 通勤災害の休業給付(労働者災害補償保険法第22条の2)
- 傷病補償年金の受給権者かどうかの判定(労働者災害補償保険特別支給金支給規則第3条第1項かっこ書き)。受給権者には休業特別支給金が支給されない
- 支給される日かどうかの判定。日数は利用者が入れる
- 使用者の災害補償(労働基準法第76条)
私傷病のときの傷病手当金・出産手当金は健康保険法にあり、別の制度である。数字をどう確かめたかは検算の方法に書いてある。