寄附金控除は、特定寄附金を支出した場合に、その額から2,000円を引いた金額を総所得金額などから引く制度である(所得税法第78条第1項)。
上限は総所得金額等の40%
条文は第1号の金額が第2号の金額を超えるとき、その超える金額を控除すると書いている(所得税法第78条第1項)。
| 金額 | 条番号 | |
|---|---|---|
| 第1号 | その年に支出した特定寄附金の合計額。ただし総所得金額等の40%が上限 | 所得税法第78条第1項第1号 |
| 第2号 | 2,000円 | 同項第2号 |
したがって控除額は「特定寄附金の合計額と総所得金額等の40%のうち小さいほう」から2,000円を引いた金額である(所得税法第78条第1項)。特定寄附金が2,000円以下のときは控除額が生じない。
何が特定寄附金に当たるか
所得税法第78条第2項が4つ挙げている。
- 国または地方公共団体に対する寄附金。ただし寄附をした者が設備を専属的に利用するなど特別の利益が及ぶものを除く(同項第1号)
- 公益社団法人・公益財団法人その他公益を目的とする事業を行う法人または団体に対する寄附金のうち、広く一般に募集されることなどの要件を満たすものとして財務大臣が指定したもの(同項第2号)
- 所得税法別表第一に掲げる法人などのうち政令で定めるものに対する、その主たる目的である業務に関連する寄附金(同項第3号)
- 公益信託の信託財産とするために支出した寄附金(同項第4号)
学校の入学に関してするものは特定寄附金から除かれる(所得税法第78条第2項柱書)。
ふるさと納税の住民税側は別の法律にある
ふるさと納税で住民税から引かれる寄附金税額控除は、所得税法第78条ではなく地方税法にある。道府県民税は地方税法第37条の2、市町村民税は同法第314条の7である。このページは所得税法第78条の所得控除だけを計算している。
政治活動に関する寄附について、所得控除ではなく税額控除を選べる特例は租税特別措置法第41条の18にある。認定特定非営利活動法人等への寄附は同法第41条の18の2、公益社団法人等への寄附は同法第41条の18の3にある。
2つの号を引き算する形で書かれている
所得税法第78条第1項は、第1号から第2号を引くという形で書かれている。
| 号 | 中身 | 条番号 |
|---|---|---|
| 第1号 | その年中に支出した特定寄附金の額の合計額(総所得金額等の40%が上限) | 所得税法第78条第1項第1号 |
| 第2号 | 2,000円 | 所得税法第78条第1項第2号 |
第1号が第2号を超えるときに、その超える金額を控除する(所得税法第78条第1項)。2,000円ちょうどなら控除は0円である(同項第2号)。
40%の上限は第1号のかっこ書きにある(所得税法第78条第1項第1号)。寄附した額そのものではなく、上限を当てた後の額から2,000円を引く(同項第2号)。
特定寄附金とは何か
第2項が4つの号で定めている(所得税法第78条第2項)。「学校の入学に関してするもの」は柱書で除かれている。
| 号 | 中身 |
|---|---|
| 第1号 | 国または地方公共団体に対する寄附金(特別の利益が及ぶものを除く) |
| 第2号 | 公益社団法人・公益財団法人その他公益を目的とする事業を行う法人等に対する寄附金のうち、財務大臣が指定したもの |
| 第3号 | 別表第一に掲げる法人その他特別の法律により設立された法人のうち、政令で定めるものに対する寄附金 |
| 第4号 | 公益信託の信託財産とするために支出した寄附金 |
どの法人が当たるかは、財務大臣の指定(第2号)や政令(第3号)で決まる。 所得税法第78条の本文だけでは判定できない。この道具は判定をしていない。金額を入れてもらう形にしている。
ふるさと納税は、所得税と住民税の2本立て
ふるさと納税は、所得税の側では第78条第2項第1号の「地方公共団体に対する寄附金」として所得控除になる。 それとは別に、住民税の側で税額控除がある。
| 何から引くか | 条番号 | |
|---|---|---|
| 所得税 | 所得(所得控除) | 所得税法第78条第1項 |
| 住民税(道府県民税) | 税額(税額控除) | 地方税法第37条の2 |
| 住民税(市町村民税) | 税額(税額控除) | 地方税法第314条の7 |
所得税は所得から引き、住民税は税額から引く。段が違う。 所得税法第21条第1項でいえば、所得税の寄附金控除は第3号、住民税の寄附金税額控除は税額を計算した後の話である。
この道具は所得税法第78条の所得控除だけを出す。
住民税の寄附金税額控除は算式が違う
住民税の側は所得控除ではなく税額控除で、2,000円を超える部分に一定の率を掛ける形になっている(地方税法第37条の2・第314条の7)。所得税法第78条の算式とは別物である。住民税の所得割そのものは住民税の所得割と均等割にある。
端数の扱い
所得税法第78条第1項は端数について何も書いていない。 40%の上限を当てて2,000円を引くだけである。
よくある取り違え
1. 「寄附した額が全部控除される」
2,000円を引く(所得税法第78条第1項第2号)。さらに総所得金額等の40%が上限である(同項第1号かっこ書き)。
2. 「ふるさと納税は税額から引かれる」
所得税の側は所得控除である(所得税法第78条第1項)。税額から引かれるのは住民税の側(地方税法第37条の2・第314条の7)である。
3. 「どこに寄附しても控除できる」
特定寄附金に限られる(所得税法第78条第2項)。財務大臣の指定(同項第2号)や政令(同項第3号)で範囲が決まっている。
4. 「学校への寄附は控除できる」
入学に関してするものは除かれる(所得税法第78条第2項柱書)。
5. 「上限は40%だから安心」
40%は寄附額の側の上限であって、控除額の上限ではない。 40%を当てた後の額から2,000円を引いた残りが控除額になる(所得税法第78条第1項第1号・第2号)。
よくある質問
総所得金額等とは何ですか
総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額の合計額である(所得税法第78条第1項第1号)。基礎控除の段を決める「合計所得金額」(所得税法第2条第1項第30号)とは条文上の語が違う。
2,000円は寄附先ごとですか
第2号は「二千円」とだけ書いている(所得税法第78条第1項第2号)。第1号が「合計額」なので、合計から1回引く形になる。
政治献金も対象ですか
所得税法第78条第2項の4つの号のいずれかに当たるかで決まる。 政治活動に関する寄附金の税額控除は租税特別措置法第41条の18にあり、そちらは別の制度である。
現物の寄附はどうなりますか
第1項は「特定寄附金を支出した場合」と書いている(所得税法第78条第1項)。金銭以外の扱いは同条には書かれていない。
確定申告をしないと使えませんか
所得税法第78条には申告の要件が書かれていない。 ただし年末調整では処理されない控除である。
寄附金控除と寄附金税額控除は両方使えますか
所得税の側では、政治活動に関する寄附金など一部について選択制がある(租税特別措置法第41条の18)。所得税法第78条だけを読むと、この選択には辿り着けない。
所得税の計算のどこに入るか
寄附金控除は所得控除である。所得税法第21条第1項第3号の段で、税率を当てる前の所得から引く。
所得控除どうしの順序は、雑損控除だけが先と決まっている(所得税法第87条第1項)。同項は寄附金控除を名指しで挙げている。引く先は総所得金額・山林所得金額・退職所得金額の順である(同条第2項)。
支出した年で引く
第1項は「各年において、特定寄附金を支出した場合」と書いている(所得税法第78条第1項)。
支出した年の控除である。 申込みをした年ではない。
この計算が扱っていないこと
- 特定寄附金に当たるかどうかの判定(所得税法第78条第2項)。金額を入れてもらう形にしている
- 住民税の寄附金税額控除(地方税法第37条の2・第314条の7)。ふるさと納税の実質的な効果はこちらが大きい
- 政治活動に関する寄附金の税額控除(租税特別措置法第41条の18)