これは医療費控除の「特例」である
租税特別措置法第41条の17の見出しは「特定一般用医薬品等購入費を支払つた場合の医療費控除の特例」である。
所得税法第73条の医療費控除とどちらかを選ぶ(同条第1項「その者の選択により」)。両方は使えない。
「セルフメディケーション税制」という語は、租税特別措置法第41条の17に出てこない。 条文の見出しは上のとおりである。
読み替えで作られている
租税特別措置法第41条の17第1項は、所得税法第73条第1項の字句を読み替える形で書かれている。
同条第一項中「各年」とあるのは「平成二十九年から令和八年までの各年」と、「医療費を」とあるのは「租税特別措置法……
独立した算式を持っていない。 医療費控除(所得税法第73条第1項)の条文を書き換えて使う。だから「医療費控除の特例」という見出しになっている。
読み替えの対象になるのは第1項だけである。 所得税法第73条第2項(医療費の範囲)と第3項(名称)は読み替えられない。
適用の要件は3つ
| 要件 | 中身 | 条番号 |
|---|---|---|
| 期間 | 平成29年1月1日から令和8年12月31日までに支払ったこと | 租税特別措置法第41条の17第1項 |
| 取組 | その年中に健康の保持増進及び疾病の予防への取組として政令で定める取組を行っていること | 同項 |
| 選択 | その者の選択により適用すること | 同項 |
購入しただけでは足りない。 取組を行っていることが要件である。取組の中身は政令にある。
期間の定めがある特例である。 所得税法第73条の医療費控除には期間の定めが無い。
対象になる医薬品
第1項が2つの性質を挙げている(租税特別措置法第41条の17第1項)。
| 性質 | 中身 |
|---|---|
| 代替性 | 療養の給付として支給される薬剤(医療用薬剤)との代替性が特に高い一般用医薬品等 |
| 適正化の効果 | その使用による医療保険療養給付費の適正化の効果が著しく高いと認められる一般用医薬品等 |
一般用医薬品等とは、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第4条第5項第3号の要指導医薬品と、同項第4号の一般用医薬品である(租税特別措置法第41条の17第1項)。
この道具は該当するかどうかの判定をしていない。
1万2,000円を超える部分。上限は8万8,000円
| 額 | 条番号 | |
|---|---|---|
| 差し引く額 | 1万2,000円 | 租税特別措置法第41条の17第1項 |
| 控除額の上限 | 8万8,000円 | 租税特別措置法第41条の17第1項 |
購入額が10万円のとき、1万2,000円を引いて8万8,000円になり、ちょうど上限に届く(租税特別措置法第41条の17第1項)。
10万円を超えても控除額は増えない(租税特別措置法第41条の17第1項)。
医療費控除との比較
| 差し引く額 | 上限 | 条番号 | |
|---|---|---|---|
| 医療費控除 | 総所得金額等の5%と10万円の小さいほう | 200万円 | 所得税法第73条第1項 |
| セルフメディケーション税制 | 1万2,000円(定額) | 8万8,000円 | 租税特別措置法第41条の17第1項 |
足切りの性質が違う。 医療費控除は所得に応じて動くが(所得税法第73条第1項)、こちらは定額の1万2,000円である(租税特別措置法第41条の17第1項)。
総所得金額等が200万円未満なら、医療費控除の足切りは10万円より小さくなる(所得税法第73条第1項)。セルフメディケーション税制の足切りは所得に関わらず1万2,000円である(租税特別措置法第41条の17第1項)。この道具は両方の額を出すだけで、どちらを選ぶかは書かない。医療費控除を参照。
医療費控除との共通点
どちらも所得控除である。 所得税法第21条第1項第3号の段で、税率を当てる前の所得から引く。
所得控除の順序は雑損控除だけが決まっている(所得税法第87条第1項)。雑損控除を参照。
どちらも年末調整では処理されない。 確定申告が要る。
補てんされる部分を除く点も同じである(所得税法第73条第1項かっこ書き)。租税特別措置法第41条の17第1項が同条を読み替えて使うためである。
住民税にも影響する
所得控除なので、住民税の課税標準にも効く。 地方税法は所得税法の計算の例による形をとっているが、セルフメディケーション税制は租税特別措置法にあり、地方税法附則に対応する定めがある。
よくある取り違え
1. 「医療費控除と両方使える」
選択である(租税特別措置法第41条の17第1項)。
2. 「市販薬なら何でも対象」
代替性と適正化の効果で絞られている(租税特別措置法第41条の17第1項)。
3. 「買えば使える」
政令で定める取組を行っていることが要件である(租税特別措置法第41条の17第1項)。
4. 「上限は無い」
8万8,000円である(租税特別措置法第41条の17第1項)。
5. 「所得税法にある制度」
租税特別措置法第41条の17にある。 所得税法第73条を読み替えて使う。
よくある質問
家族の分も合算できますか
読み替えの元である所得税法第73条第1項が「自己又は自己と生計を一にする配偶者その他の親族」と書いている。
取組とは何ですか
政令で定める取組である(租税特別措置法第41条の17第1項)。健康診査や予防接種などが租税特別措置法施行令にある。
期限が来たらどうなりますか
第1項が令和8年12月31日までと書いている(租税特別措置法第41条の17第1項)。
領収書は要りますか
租税特別措置法第41条の17には書かれていない。 申告の手続による。
補塡される部分はどうなりますか
読み替えの元である所得税法第73条第1項のかっこ書きが、保険金等で補てんされる部分を除いている。
年末調整で処理されますか
医療費控除と同じく、年末調整では処理されない。
この計算が扱っていないこと
- 政令で定める取組の判定(租税特別措置法第41条の17第1項)
- 特定一般用医薬品等に当たるかどうかの判定(同項)
- 医療費控除とどちらの控除額が大きいか。両方の額を出すだけで、どちらを選ぶかは書かない
- 住民税への影響(地方税法附則)