特定親族特別控除の対象になるのは、生計を一にする年齢19歳以上23歳未満の親族で、合計所得金額が123万円以下であり、控除対象扶養親族に該当しないものである。その親族1人につき一定額を引く(所得税法第84条の2第1項)。
第2号の算式
第2号は、63万円から「その特定親族の合計所得金額のうち84万1円を超える部分の金額に2を乗じた金額」を引くと書いている(所得税法第84条の2第1項第2号)。
その引く金額には、さらに条件が付いている。10万円の整数倍から8万円を引いた金額でないときは、10万円の整数倍から8万円を引いた金額のうち、その金額に満たない最も大きいものを使う(同号)。
引く金額は2万円・12万円・22万円…と10万円ずつ増える(所得税法第84条の2第1項第2号)。配偶者特別控除は5万円きざみで、こちらは10万円きざみである。
表と算式が一致することを確かめた
このページは表を写さず、上の算式そのままで計算している。国税庁が公表している表(タックスアンサー No.1177 特定親族特別控除)と、合計所得金額58万1円から123万円まで千円きざみで突き合わせ、650点すべてで一致した(検算の方法)。
下限の58万円は第84条の2に書かれていない
特定親族は「控除対象扶養親族に該当しないもの」と定められている(所得税法第84条の2第1項)。控除対象扶養親族は、扶養親族のうち年齢16歳以上の者であり(同法第2条第1項第34号の2)、扶養親族は合計所得金額が58万円以下の者である(同項第34号)。
その結果として58万円が下限になる。 58万円以下なら扶養控除の対象であり、19歳以上23歳未満なら特定扶養親族として63万円が引ける(同法第2条第1項第34号の3・第84条第1項)。
誰が特定親族になるか
第1項の柱書が、括弧を重ねて対象を絞っている(所得税法第84条の2第1項)。
| 条件 | 中身 |
|---|---|
| 続柄 | 生計を一にする年齢19歳以上23歳未満の親族(配偶者を除く)と、里親に委託された児童 |
| 除かれる者 | 青色事業専従者として給与の支払を受ける者と事業専従者(所得税法第57条第1項・第3項) |
| 所得 | 合計所得金額が123万円以下 |
| 重複の排除 | 控除対象扶養親族に該当しないこと |
| 判定の時期 | その年12月31日の現況による(所得税法第85条) |
里親に委託された児童は、児童福祉法第27条第1項第3号により委託されたものである(所得税法第84条の2第1項)。扶養親族の定義(所得税法第2条第1項第34号)にも同じ児童が入っている。 条をまたいで同じ範囲を指している。配偶者は除かれ、配偶者特別控除の側で扱う(所得税法第83条の2)。
「控除対象扶養親族に該当しないもの」なので、扶養控除と同時には使えない。 合計所得金額が58万円以下なら控除対象扶養親族になり(所得税法第2条第1項第34号)、扶養控除の特定扶養親族63万円のほうになる。扶養控除を参照。
扶養控除の切れ目を埋める制度である
| 特定親族の合計所得金額 | 使う制度 | 額 | 条番号 |
|---|---|---|---|
| 58万円以下 | 扶養控除(特定扶養親族) | 63万円 | 所得税法第84条第1項 |
| 58万円超 85万円以下 | 特定親族特別控除 | 63万円 | 所得税法第84条の2第1項第1号 |
| 85万円超 115万円以下 | 特定親族特別控除 | 逓減 | 同項第2号 |
| 115万円超 120万円以下 | 特定親族特別控除 | 6万円 | 同項第3号 |
| 120万円超 123万円以下 | 特定親族特別控除 | 3万円 | 同項第4号 |
| 123万円超 | どちらも無い | — | 同項柱書 |
58万円を超えた瞬間に63万円が消えるのを防ぐ制度である(所得税法第84条の2第1項第1号)。扶養控除の特定扶養親族の63万円(同法第84条第1項)と、額が連続するように作られている。
逓減の算式を、表に書き写していない
第2号が、63万円から減っていく額を1つの式で書いている(所得税法第84条の2第1項第2号)。
六十三万円からその特定親族の合計所得金額のうち八十四万一円を超える部分の金額に二を乗じた金額(当該乗じた金額が十万円の整数倍の金額から八万円を控除した金額でないときは、十万円の整数倍の金額から八万円を控除した金額で当該乗じた金額に満たないもののうち最も多い金額とする。)を控除した金額
この道具は、この算式をそのまま計算している。 表を書き写していない。
かっこ書きが言っているのは、引く額を「10万円の倍数 − 8万円」の刻みに丸めるということである(所得税法第84条の2第1項第2号かっこ書き)。2万円・12万円・22万円…という並びになる。配偶者特別控除の刻み(5万円の倍数 − 3万円。所得税法第83条の2第1項第1号ロ)とは別の数字である。配偶者特別控除と比べると、起点も倍率も刻みも違う。
| 配偶者特別控除 | 特定親族特別控除 | |
|---|---|---|
| 満額 | 38万円 | 63万円 |
| 逓減の起点 | 93万1円 | 84万1円 |
| 超える部分に掛ける数 | 1倍 | 2倍 |
| 刻み | 5万円の倍数 − 3万円 | 10万円の倍数 − 8万円 |
| 条番号 | 所得税法第83条の2第1項第1号ロ | 所得税法第84条の2第1項第2号 |
本人の所得による段は無い
配偶者特別控除には本人の所得で3分の2・3分の1になる段があるが(所得税法第83条の2第1項第2号・第3号)、特定親族特別控除には無い。 第84条の2第1項は本人の合計所得金額を見ていない。
使えなくなる場合が3つある
第2項が定めている(所得税法第84条の2第2項)。
| 号 | どんな場合 |
|---|---|
| 第1号 | 特定親族の側が、本人を特定親族特別控除の対象にしている場合 |
| 第2号 | 特定親族が、扶養控除等申告書に源泉控除対象親族を記載した居住者として源泉徴収を受けている場合 |
| 第3号 | 前2号のほか、政令で定める場合 |
第3号は「前二号に掲げる場合のほか、政令で定める場合」である(所得税法第84条の2第2項第3号)。条文が政令に開いている。給与所得者の扶養控除等申告書に記載された源泉控除対象親族がある居住者として、徴収税額の規定の適用を受けている場合も適用しない(同項第2号)。
この道具は第2項の判定をしていない。
住民税の特定親族特別控除は額が違う
住民税の側は地方税法第314条の2第1項第12号にある。 特定親族の合計所得金額の上限は123万円で所得税と同じだが、額の並びは違う。市町村民税は同号、道府県民税は同法第34条第1項第12号である。
よくある取り違え
1. 「扶養控除と両方使える」
使えない。 第1項が「控除対象扶養親族に該当しないもの」を対象にしている(所得税法第84条の2第1項)。
2. 「大学生なら使える」
条文が見ているのは年齢だけである(所得税法第84条の2第1項)。19歳以上23歳未満という要件で、在学しているかどうかは書かれていない。
3. 「配偶者特別控除と同じ算式」
違う。 起点は84万1円(所得税法第84条の2第1項第2号)で、超える部分に2を乗じる。配偶者特別控除は93万1円で1倍である(同法第83条の2第1項第1号ロ)。
4. 「本人の所得が多いと減る」
減らない。 所得税法第84条の2第1項は本人の合計所得金額を見ていない。
5. 「配偶者も対象になる」
除かれる。 第1項が「その居住者の配偶者を除く」と書いている(所得税法第84条の2第1項)。
よくある質問
いつからの制度ですか
令和7年分から適用される。 この道具は時点を選べるようにしてあり、2024年4月1日時点の所得税法には第84条の2そのものが無い。 その時点を選ぶと「この時点では計算できません」と出す。0円とは出さない。いつの条文で計算するかを参照。
何人でも引けますか
引ける。 第1項は「その特定親族一人につき」と書いており、人数の上限は無い(所得税法第84条の2第1項)。
里親に委託された児童も対象ですか
対象である(所得税法第84条の2第1項)。児童福祉法第27条第1項第3号により委託された児童が挙げられている。
障害者控除と重ねられますか
重ねられる。 障害者控除は所得税法第79条第2項で「扶養親族」を対象にしており、特定親族特別控除(同法第84条の2)とは別の条である。障害者控除を参照。
123万円を1円超えたら
控除は無くなる(所得税法第84条の2第1項柱書)。
源泉徴収ではどう扱われますか
源泉控除対象親族という別の区分がある(所得税法第2条第1項第34号の5)。19歳以上23歳未満で合計所得金額100万円以下の親族が含まれる。123万円ではない。給与の源泉徴収税額(月額表)を参照。
所得税の計算のどこに入るか
特定親族特別控除は所得控除である。所得税法第21条第1項第3号の段で、税率を当てる前の所得から引く。
所得控除どうしの順序は、雑損控除だけが先と決まっている(所得税法第87条第1項)。同項は特定親族特別控除を名指しで挙げている。
額の4段
所得税法第84条の2第1項が4つの号で額を定めている。
| 号 | 特定親族の合計所得金額 | 額 | 条番号 |
|---|---|---|---|
| 第1号 | 85万円以下 | 63万円 | 所得税法第84条の2第1項第1号 |
| 第2号 | 85万円超115万円以下 | 逓減 | 同項第2号 |
| 第3号 | 115万円超120万円以下 | 6万円 | 同項第3号 |
| 第4号 | 120万円超 | 3万円 | 同項第4号 |
第3号と第4号は定額である(所得税法第84条の2第1項第3号・第4号)。逓減するのは第2号だけである。
この計算が扱っていないこと
- 第2項の3つの適用除外(所得税法第84条の2第2項)
- 住民税の特定親族特別控除(地方税法第314条の2第1項第12号)
- 特定親族の合計所得金額の計算そのもの